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ちょっとした想い出話 vol.1
先日、喪中ハガキが届きました。
たしか、今年で25歳になる、南 真希(仮名)という女の子からでした。
母が他界しましたので・・・・・とのこと。妻にそれを見せ、僕らはしばし無言でそのハガキを見つめていました。。。

9年前の6月。

新婚の風夫婦は両実家から車で30分ほど離れた、駅近の小さな賃貸マンションに新居を持ちました。
401号室。4階には4世帯が住み、とりあえず同じ階の住人に手みやげを持って挨拶に回りました。
隣の402号室の南さん。母子家庭で、母と高1になる娘の二人暮らしで、玄関先に出てきた母親は、
「女二人なので、何かと不安なこともあって・・・。こちらこそ、もし何かあればよろしくお願いします。」と深々と頭を下げる丁寧な女性だった。娘は家にいてたみたいだけど、顔を見せなかった。

風は当時電車で1時間半かかる通勤生活で、朝は6時半頃家を出ていた。帰りはいつも9時以降。
休みの日なんかに南さんの母親と通路やエレベーターで会うことがあっても、住んで半年、娘を未だに見たことがなかった。
ある日帰宅した夜、妻が、
「今日、隣の南さんの娘さん、初めて見たわ。廊下でばったり」
と言った。
「会わんもんよなあ。普通ばったり会ってもおかしくないのにな。隣やのに。」

南さんの母親はとても愛想がよく、飾り気は無いけど小柄で綺麗な人だった。
きっと娘も可愛らしいんだろうなって二人とも思っていたが、妻の報告は真逆の印象だった。
「可哀想にさ、すごいアトピーで。顔中ボロボロで、手とかも。。あんた程じゃないんやけどな。たださ、たぶん、薬の影響かなぁ。母に似て背は低いねんけど、かなり太ってて、それも、何かパンパンって感じ。おまけにめっちゃ暗い感じでさ。。。」

あまりにイメージが違って、びっくりした。休みの日でも会わないのも、なんだか納得できた。出不精になってるんだろう。
風自身、小児アトピーで長年悩んできた過去があるし、結婚当時もちょっとキツイ状態だった。。痒さとの戦いの毎日。毎日というか、24時間営業。たまらない。
高校くらいから治まってきて普通に生活していたが、社会人になって3年目くらいから、また発症。
その時は働きながら劇団にも通い、舞台本番前などは毎晩稽古で今じゃ絶対出来ないようなスケジュールで暮らしていて、ストレスが貯まったのか、一気にアトピーが暴れ出した感じだった。
結婚を機に劇団を休会し、その後転勤もあって職場も近くなり残業も減り、随分と生活が落ち着いた。当時はまだバドミントンをやってなかったが、妻と毎晩のようにジョギングに出かけていたり山登りをこまめにするようになり、当時不規則な生活とストレスにより80kgまでに太った体を元の60kg台まで戻すと、アトピーも嘘のように消えた。
ま、風の話はいいんだけど。。。

それから2年ほど経った春。
ある日、インターホンがなり、隣の南さん母が尋ねてきた。
相談したいことがある・・・と。
娘のことだった。
でも、子どももいないうち夫婦が相談に乗れるんかいな・・・?と思って聞いてると、
「ご主人(風)が、ここに越して来られたとき、たしかちょっとアトピーを持たれてるように思ったのですが・・・最近、ほっそりされて随分肌も綺麗になられたなとお見受けするんです」
なるほど。そういうことで相談か・・・・
でも、風はたまたまそういう経過で痩せてアトピーが引いただけであって、医者じゃ無いし、娘さんのアトピーがそれで治るかといったら、違う気が・・・・ と、答えておりますと、
母親は少し涙をこらえるような目になって、
「有名な病院も行きましたし、良いと聞けば何でもやってきたんですけどね。。。少し良くなってもすぐに戻るの繰り返しで・・・」
母は話を続けた。
「あの子は元々スポーツも好きで、体育の成績もいい子でした。でも、中学の頃から、汗をかくと痒くなるというので運動はしなくなったんです。それ以来、逆にアトピーもひどくなるしあのように随分太ってしまって、そのうちどんどんふさぎ込んで、正直、友達もたぶん・・・いないような、感じで・・・・」
わかる気がするな・・・・と思いながら聞いていました。
「それで、ご主人を見てて、真希ももし、運動して、少し痩せて、それで肌もちょっとでも綺麗になれば・・・と思いまして・・・ ただ・・・・」
「ただ?」
「一人では外を走るのはイヤだと。ちょっと閉じこもってる期間が長すぎたのかなと。。私のせいでもあるんですけど。。」
今まで黙って聞いていた妻が初めて口を出した。
「私たちはいいですよ。運動不足の娘さんに合わせて出来る範囲からジョギング一緒にしますよ、喜んで。でも、真希ちゃんはそうしたがってるんですか?」
そう、そこ、一番の問題。母、突っ走ってないか??
しかし母は、
「本当は私が一緒にすればいいんです。ただ・・・・少し、私自身も実は病弱でして・・・・」
詳しくは書かないけど、病名も話してくれた。確かにそれじゃあ毎日の仕事だけでいっぱいいっぱいだろう。
で、娘は、本当は運動したいと言ったという。
母と娘の会話の内容や娘の本心がどこにあるか、本当は確認したいところだったけど、なんだかお母さんを見てるとそんなことどうでもよくなってきた。近所のレストランで働いてるのを知っている。10時閉店の店である。パート賃金だけで、生活費、自分の治療費に娘の学費、そして娘の薬代。経済的に苦しくない訳がない。隣とは言え、たいしてつきあいも無いのに「娘をジョギングに連れてあげてくれ」と頼みに来るほど、何とか今の生活を変えなきゃという思いが詰まってるように思えた。

「とりあえず、ジョギングシューズを買ってあげてください」と、妻が言った。
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